宮崎から全国へ。”顧客も従業員の1人”ファンマーケティングで広げるEC戦略とは。

  • 有限会社九南サービス 田中耕太郎

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【スピーカー】
田中耕太郎(たなか・こうたろう)
有限会社九南サービス代表取締役。タマチャンショップ店長兼キャプテン。小さな椎茸農家からスタートし、今では雑穀やナッツ、スーパーフード、お茶、そしてオリジナルの健康食品やコスメなど、「食」に関するさまざまな商品を扱っている。タマチャンショップがお届けしたいのは、『しあわせ食』。安心・安全で、おいしく栄養いっぱいの「食」を楽しみながら、健康に、美しくなれる。みんなが笑顔になれる「しあわせ食」をテーマに、地元・九州はもちん、全国各地から上質な食材を厳選し、独自に商品開発も行なう。

【聞き手】
真野勉(まの・つとむ)
株式会社SUPER STUDIO取締役CRO。1987年、東京都出身。青山学院大学を卒業後、 ITベンチャー企業へ入社し、セールスとして同社の東証マザーズ上場に貢献。 2014年にSUPER STUDIOを共同創業し、現在はCROとして企業間のアライアンスをリードしている。

【モデレーター】
小早川幸一郎(こばやかわ・こういちろう)
クロスメディアグループ株式会社代表取締役。ビジネス書出版社での編集職を経て、2005年に(株)クロスメディア・パブリッシングを設立。以後、編集力を武器に「メディアを通じて人と企業の成長に寄与する事業を行い、社会に新しい価値を提供する」というビジョンのもと、クロスメディアグループ(株)を設立。出版事業、マーケティング支援事業、メディア事業、アクティブヘルス事業を展開中。編集者としては、約30年間で800冊以上の企画・制作に携わる。近年は『新規事業と多角化経営』『人間主義的経営』『これからのデザイン経営』など、最先端の経営をテーマにした書籍の編集を行う。

地方企業が、自社の溢れる魅力を世の中に伝えることができれば、日本中、世界中、どこに暮らしている人にも、自慢の商品の購入や、心ときめくサービスの体験をしてもらうことができます。そして、その土地独自の価値を求めて、日本中、世界中から人が訪れるようになります。
「地方発全国、日本発世界。」地方企業の潜在能力を信じ、そのポテンシャルの花が咲き誇れるように、地方企業の皆さまと想いを共にしながら、この国の明るく心豊かな未来をつくっていく。その意志のある人たちが集い、協力し合う場として、LOCAL GROWTH CONSORTIUMは発足しました。
本記事では、同団体の発足トークイベントSession.2の内容をお届けします。ECを主軸に宮崎から全国へと展開を広げ、6年連続で「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」を受賞するタマチャンショップ。「顧客も社員の1人」と捉えたファンマーケティングとそのEC戦略について、タマチャンショップを運営する有限会社九南サービスの代表取締役であり、同店店長兼キャプテンの田中氏に、SUPER STUDIO 取締役CROの真野氏が伺います。

※本記事は2024年4月にクロスメディアグループ株式会社、株式会社SUPER STUDIO、ソウルドアウト株式会社、株式会社PR TIMES、株式会社ロケットスターが共同で開催したLOCAL GROWTH CONSORTIUM発足イベントの内容をもとに文章化し、加筆・編集を行ったものです。

九州から食の幸せを届ける

小早川:トークセッション2では有限会社九南サービス代表取締役の田中さんをゲストにお迎えし「宮崎から全国へ顧客も従業員の一人、ファンマーケティングで広げるEC戦略とは?」をテーマに、LOCAL GROWTH CONSORTIUM発起人である株式会社SUPER STUDIO 取締役CROの真野さんとお話しいただきます。

小早川:まず、九南サービスさんはどのようなビジョンのもと、どのような事業を展開されているのかをお聞かせください。

田中:私たちのビジョンは「食に楽しみと発見を 食のワンダーランドの創造。」、ミッションは「美と健康をもっと楽しめる事を、商品やサービスを通じ伝えていく。」です。食を楽しむ文化をつくり、食のワンダーランドをつくる。美容や健康について努力するのではなく、美味しいものを楽しんで、気づいたら健康になっているという体験の提供を大切に、プロダクトを輩出しています。

小早川:ありがとうございます。タマチャンショップは6年連続で楽天の「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。日本に多くのECショップがある中で、タマチャンショップの独自性は何でしょうか。

田中:1つは、すべての商品において、九州から幸せを届けることを意識していることです。九州産の原材料をメインにして、できるだけ九州の良さを出しながら、商品を作っていく。それから、すべての商品は美容と健康を軸にしています。
それに、先ほども申し上げたように、商品から考えるというのではなく、ビジョンをもとに商品を作っていくという点です。ある商品がマーケットで売れているから似たような商品を作るのではなく、食のワンダーランドを実現するための商品を作る。そうすることで、商品に独自性が出ているのかなと思います。

小早川:よくわかりました。タマチャンショップの成長を間近で見てこられた真野さんから、田中さんにどのようなことをお聞きになりたいですか?

真野:私たちは、タマチャンショップの立ち上げ時にはまだ携わっていませんでした。立ち上げの背景についてお伺いできたらと思います。

田中:当社はもともと農業からスタートした企業で、私で3代目になります。椎茸を1年かけて自然の中で育てるという昔ながらの栽培方法でした。しかし、20数年前から海外産の低価格の椎茸が出回るようになり、日本の椎茸の価値が下がってきました。そこで現会長が「もっと田舎を元気にしていきたい。日本の椎茸を全国に広めて、日本のブランド食材を守ろう」と、タマチャンショップを立ち上げました。「椎茸屋タマチャンショップ」が最初の屋号だったんです。

お客様と共に商品を開発する

真野:以前にもお話させていただいた中で、商品開発に強い思い入れがあると聞いています。すべての商品開発に田中さんが携わっているそうですが、どういった思いで商品開発されているのか、ぜひお聞かせください。

田中:まず、自分が欲しいものを作ることをすごく大事にしています。「こういうものが世の中にあったらな」と思うものを形にするんです。それから、社会問題やお客様のお悩みを解決する商品を作ることでお客様の幸せにつながれば、という思いで商品開発しています。
また、商品の中で九州の良さを出していきたいと思っています。例えば、老舗の味噌・醤油の会社さんと一緒に商品開発するなど、できる限り九州のもの、地元のものをしっかり使って、九州の食のネットワークを最大限に生かすようにしています。

真野:商品数はどれぐらい作られていますか?

田中:500種類以上はあると思います。

真野:それはすごいですね。

田中:私自身、最初はそこまで食に興味はなかったのですが、仕事を進めていく中で自分が一番食のオタクになりました。気づいたらいろいろな商品を開発していましたね。

真野:以前お話を伺った際すごく印象に残っているのが、お客様と一緒に商品開発をするということです。

田中:そうですね。2022年には、コミュニティサイト「タマリバ」を立ち上げました。自分たちだけで商品を作るよりも、多くのお客様と一緒に美容と健康の問題を解決したいという思いが強くなりました。商品の開発段階からお客様に入っていただいた方が、より良い商品ができると思っています。例えば「パッケージはこういう形状の方が使いやすい」といったお声を反映させるなど、少しずつお客様と共同で商品を作っています。

真野:田中さんは、お客様も含めて全員社員だといつもおっしゃっていますよね。

自社ECでブランドの世界観を伝える

真野:タマチャンショップが楽天市場でのECを始めてグロースしたあたりから、当社はお手伝いさせていただいていますが、自社ECを開始した理由をお伺いできますか。

田中:もともと、システムがある程度揃っているという点で楽天市場が一番やりやすかったんです。でも、もっと自社のビジョンやコンセプトをお客様に伝えたいと思ったときに、どうしてもECモールの場合制限がかかってしまいます。自分たちのコアなコンテンツを提供したり、お客様との距離を縮めたりするためには、自社ECの構築が非常に大事になってくると思ったんです。

小早川:真野さん、ECモールを活用する企業と自社ECを立ち上げる企業について、最近の傾向を教えていただけますか。

真野:ECモールでショップを開く企業様も多いのですが、田中さんがおっしゃる通り、最近は自分たちの思いを強く伝えたいと考えて、自社ECからスタートしたり、ECモールと自社ECのハイブリッドにしたりする企業様が増えてきています。

小早川:なるほど。ECモールは知名度や集客力はあるけれど、表現の部分で制約があるから、自社ECとECモールのハイブリッドでやるパターンが増えているということなんですね。

真野:そうですね。それに、自社ECでなければ「どんな人が買っているのか」を解像度高く把握することができないんです。それも自社ECの活用が増えている背景だと思います。

小早川:田中さん、自社ECを始めてからの苦労、そして、いろいろなサービスがある中でSUPER STUDIO のecforceを選んだ理由を教えてください。

田中:立ち上げ時は、自社ECを知ってもらうためにすごく苦労しました。商品登録も大変でしたね。実は自社ECと同時にブログサイトも立ち上げたので、最初はかなり労力がかかっていたんです。SUPER STUDIOさんは、我々の様々な要望に対して、フレキシブルに対応してくださったので即決しました。

小早川:EC事業はオンラインで契約ややり取りが完結してしまうのかと思っていましたが、真野さんはいろいろな地方のお客様のところへ行かれていますよね。

真野:そうですね。ビジネス全般に言えることだとは思いますが、やはりECのビジネスも人対人のつながりで成り立っています。特に九州はお客様に別の企業様をご紹介いただけるなど、人とのつながりが強い場所だと感じます。お客様の所に足を運んでお話を聞きにいくことを大事にしています。

小早川:ありがとうございます。人と人の関係が大事なビジネスなんですね。

ECの人気ショップがリアル店舗を持つ理由

真野:田中さんにリアル店舗の話も伺いたいです。近年、多くのEC事業者様がリアル店舗の運営に取り組み始めています。御社ではリアル店舗の展開をどのように行っているのでしょうか。

田中:オフラインの最大の強みは、商品を手に取って体験できることです。人を介したおもてなしが成立することで、お店とお客様との濃厚な接点づくりもできます。当社がどういった思いで商品を開発しているのか、リアル店舗では直接伝わりやすいと感じています。
それに、地元の方々に知ってもらうことで、地元に貢献できます。いつか地元にタマチャンショップがあることをみなさんが誇れるような、そんなお店になれるといいなと思います。
リアル店舗はあくまでも当社の思いを伝えるために存在するものであって、主要な場所に構えていけばいいと思っています。47都道府県制覇といったところまではまだ考えていないですね。

真野:今8店舗の展開でしたでしょうか?

田中:そうですね。地域としては、鹿児島県、宮崎県、福岡県、大阪府、福井県です。

真野:福井県の店舗はファンの方が作ったんですよね?

田中:そうですね。あるお店のオーナーさんがタマチャンショップを気に入ってくださっていて、お店をリニューアルするときに「ぜひタマチャンショップの店舗を作りたい」ということで、お店の中にタマチャンショップコーナーを作っていただきました。

真野:そのお話は、すごくタマチャンショップらしいエピソードだと思います。

「食のワンダーランド」を世界へ広げる

小早川:タマチャンショップはECやリアル店舗を通して日本全国に展開されていますが、海外への展開は考えていらっしゃいますか?

田中:少しずつ海外への輸出を始めています。ECによって情報がどこでも集められるようになり、海外の方々からもオファーをいただいています。ここ数年で、当社の食に対するビジョンを世界へ広げていってもいいのではと思うようになりました。美と健康を楽しめる世界、食のワンダーランドが実現することで、平和につながるのではないか。そう思いながら進めています。

小早川:今はどちらの地域に展開されていますか?

田中:ヨーロッパ、アジア、アメリカなど幅広く展開しています。

小早川:ヨーロッパにも展開しているんですね。

田中:そうですね。1年前ぐらいからドイツでのパートナーシップを組んでいます。ドイツは食品の規制が厳しいんですね。まだ日本の企業はヨーロッパにそこまで進出していないので、登るなら高い山を登りたいと思いヨーロッパの方も挑戦しています。
現地の展示会に出展させていただいたとき、向こうの方々からオファーもいただきました。ヨーロッパの方々も、日本の食にもっと進出してきてほしいと思っていると感じます。ヨーロッパへの展開は楽しみに挑戦していきたいですね。

小早川:SUPER STUDIOさんでは1,300以上のショップを支援されています。海外進出を目指したり、実際に進出されているショップに対して、どういうサービスや支援を提供されているのでしょうか。

真野:海外用のシステムはまだ作れていないのですが、越境ECに対応できるよう外部の企業様と連携して提供できるようにしています。日本のEC業界では、数年前に台湾などのアジア圏内へ進出するブームがありましたが、多くは撤退してしまいました。それが最近再び海外へ出ていく流れになっています。

小早川:SUPER STUDIOさんでは、そこも強化していくわけですね。では、最後にお2人からメッセージをよろしくお願いします。

真野:私たちは、九州地方の企業様を含め、多くのEC事業者様に支えられてここまで来ています。今後もこうした活動を通して、ECの支援をしたいと思っています。事業者様と関わるなかで、「この商品はもっと世の中に広がるべきだ」と思うことがたくさんあります。そういったお客様の支援をするために、多くの方と今後もつながりたいと思います。

田中:インバウンドなど、いま日本にはすごくいい波が来ているなか、景気が良くなっていくためには、地方が元気にならないといけないと思っています。デジタル活用よって商品を地方から全国へと届けられることが、夢であり希望になっていると思います。地方から発信していきたいのであれば、すでに大きな波が来ています。夢をイメージし、行動していくことが一番大事です。当社もまだまだ挑戦の連続ですが、一緒に頑張っていけたらと思います。

 

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