長寿企業こそ日本の宝:中編┃老舗企業のリブランディングに必要な編集

  • クロスメディアグループ株式会社  小早川幸一郎


小早川幸一郎(こばやかわ・こういちろう)
クロスメディアグループ株式会社 代表取締役。出版社でのビジネス書編集者を経て、2005年に(株)クロスメディア・パブリッシングを設立。以後、編集力を武器に「メディアを通じて人と企業の成長に寄与する」というビジョンのもと、クロスメディアグループ(株)を設立。出版事業、マーケティング支援事業、アクティブヘルス事業を展開中。編集者としては、約30年間で800冊以上の企画・制作に携わる。近年は『新規事業と多角化経営』『人間主義的経営』『これからのデザイン経営』など、最先端の経営をテーマにした書籍の編集を行う。

今、老舗企業の経営は日本の大きな課題であり、国も支援体制も整えつつあります。廃業を選択する老舗企業が毎年ある一方で、堅実な黒字経営を続ける100年企業や、再成長の軌道に乗った老舗企業も存在しています。この厳しい環境の中でも変わらず自己変革を続け、飛躍を遂げる老舗企業にはなにがあるのでしょうか。
成長を志す地方を含む日本全国の中小・ベンチャー企業のネットビジネス拡大を支援するソウルドアウトと、「編集力でビジネスの可能性を拡げる」を掲げる出版社のクロスメディアグループが、老舗企業経営者向けに老舗が変革を遂げる術を紹介します。

本記事は3部構成になっており、前編では、老舗企業のリブランディングについて、デジタルの視点からひも解きます。

※本記事は2024年1月24日にソウルドアウト株式会社と株式会社クロスメディア・マーケティングで共催されたウェビナー「ザ・地方創生~老舗企業が遂げる変貌~」の内容をもとに文章化し、編集を行ったものです

「編集力」で企業の価値を言語化する

今回のテーマでもある「老舗企業」という言葉に、決まった定義はありません。100年以上続いている会社が老舗企業だという捉え方もあれば、戦前または戦後すぐに創業した会社を老舗企業と言うこともできます。
老舗企業であってもスタートアップ企業であっても、成長企業がすべきことは決まっています。自社の商品・サービス、マーケティング手法を改善、改良、革新していく。これらを時代に合った手法で行なっていくことが重要です。
では、老舗企業の強みは何かと改めて考えてみると、私はその歴史だと思います。長い時間の中に、自分たちは気づいていない価値がたくさん詰まっています。私たちクロスメディアグループでは、出版事業で培った編集力で、企業の価値を言語化するお手伝いをしています。老舗企業の場合は、その歴史を引き出し、再表現していきます。

私たちのグループビジョンは、「メディアを通じて人と企業の成長に寄与する事業を行い、社会に新しい価値を提供する」です。グループには出版事業を行うクロスメディア・パブリッシングと、企業のマーケティング支援を行うクロスメディア・マーケティングという会社があります。
そクロスメディア・パブリッシングでは、主にビジネス書をつくっています。2023年には、年間120冊の書籍を出版しました。そのうち50冊が当社の資本で作った商品で、残りの70冊は、企業から依頼を受けて、マーケティング・ブランディングツールとし出版したものです。後者では主に経営者の方が著者となって、その会社、商品・サービス、スタッフの魅力を伝えています。

書籍をマーケティングツールとして活用する

クロスメディア・マーケティングでは、オウンドメディア開発や広告運用など、いろいろなサービスを提供していますが、今回はブックマーケティングの話を中心にさせていただきます。

書籍は、北は北海道から南は沖縄まで、日本全国の書店に流通されます。その多くは町の中心地など立地のいい場所にあり、出版すればそこに自社の本を並べることができます。それからAmazon、楽天ブックスをはじめとした主要なオンライン書店でも、紙書籍・電子書籍として流通し、時間・場所を問わずに幅広いターゲットにリーチできます。

マーケティングツールとしての書籍の効果は、非常に大きいものです。私は、以下のようなメリットがあると考えています。

①権威性・信憑性

書籍は誰にでも出版できるものではありません。書籍の著者である、あるいは書籍に書いてある情報だというだけで、信頼度が高くなります。

②網羅性・物語性・専門性

書籍には、200~300ページ、8万~10万字という圧倒的な情報量を内包できます。専門的な情報を網羅的に、かつ読者の感情に訴えかける物語性を伴った形で伝達できます。

③長い賞味期限

新聞広告は1日、雑誌広告は1週間~1カ月。テレビCMやWeb広告も出稿期間にしか、効果は期待できません。一方で書籍は息の長いメディアであり、発刊後数年にわたって効果が期待できます。

④プル型営業ツール

自社が出版した本を読んだ人(見込み客)から、問い合わせが入るケースも多くあります。書籍が24時間365日働く営業マンになってくれるのです。

⑤新規見込み客獲得ツール

書籍に「特典ダウンロード」としてQRコードを掲載することで、氏名・メールアドレスなど見込客リストを構築できます。それを活用して、メルマガ配信などでプッシュ型営業も可能です。

⑤Web集客(コンテンツマーケティング)ツール

世の中にはさまざまなコンテンツがありますが、その中で最も密度の高いものが書籍だと考えています。書籍をもとにした記事をコーポレートサイトやオウンドメディアなどで展開し、集客につなげることができます。

⑥顧客・取引先開拓ツール

営業訪問時に、書籍を会社案内や商品パンフレットと同様に営業ツールとして活用できます。企業や商品・サービスへの理解を熟成し、新規顧客、取引先、販売店、代理店、アライアンスパートナーなどを開拓できます。

⑦人材採用・定着ツール

新卒・中途採用の選考過程で書籍を配布することで、企業や商品・サービスに対する深い理解を熟成し、ミスマッチを解消できます。また、従業員に配布することで、会社へのロイヤリティを高め、離職率を低下させる効果もあります。社員に企業理念や経営理念、創業者の考えを浸透させるために本を作りたいという企業もたくさんあります。

このように、書籍にはすでに価値あるブランドを持つ企業の成長を後押しや、新たにブランディングを図る企業の価値作りといった効果があるのです。

               

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